技術ファイル|映像収録(撮影)編

撮影技術会社

Valid XHTML 1.1 正当なCSSです!

デジタル一眼、動画撮影に有効なLEDライト(照明)は!?

LPL VL-960C pro
LPL VL-960C Pro

撮影において最も大切なことに「ライティングをどのように構成するのか」という問題がある。ここで失敗すれば、後の制作工程に大きな影響がでてしまう。即ちライティングとは最優先に考慮されなくてはならないのだ。映像の場合は必然的に定常光(連続光)だが、取材先では複雑なミックス光源も多く、どのように光量、質、色をコントロールしていくかが常に悩みどころとなる。加えてカメラのAWB(オートホワイトバランス)の性能上の問題もあるため、これらを踏まえながらLEDライトの選択やライティング構成について検証したい。

主要メーカーのLEDライト(※リスト順位不同)
1と2は色温度変換機能付き、それ以外は色温度変換フィルターが必要。照度に関しては、各メーカーが50cm前後で公表しているため、その値を基準にした。但し、公表値が1mの機種は50cmで再計算している。最大照度のケルビン値がメーカーによって異なるため、詳細は各リンク先を参照して欲しい。

LEDライトの選定基準は一定の照度がありCP(コストパフォーマンス)に優れていること、色温度が変更できること(色温度変換機能タイプ、またはフィルター交換タイプ)、光量調整機能(可変または段階)があること、カメラに装着して使用できる(サイズ・重量)ことである。複数台所有し、様々な活用法を考慮するならば、この4項目はすべて外せない。

そもそもLEDライトは必要なのか?

ビデオカメラや一眼ムービーに取り付けできる小型ライトとして、LEDライトが注目されている。その利点はコンパクトで発熱が少なく、一定の光量をバッテリーで制御できることなどが挙げられる。 そのため野外ロケなどでは必須アイテムとなっており、多くのメーカーが様々な製品を競いながら発表している。ENGの場合、野外、屋内を問わずカメラ部分に直にライトが取り付けられるメリットは大きい。現状ではバッテリータイプのLEDライトは最も適した光源の一つとして必要不可欠だと思われる。

点灯イメージ
約50cmの距離から、スチレンボードに向かってフル発光(50cm/照度3000lux)
VL-960C Proは「価格・性能・使いやすさ」のバランスがよく、その光量には驚かされる。
0〜100の可変光量調整機能付。

主灯(キーライト)として使う

LEDライトを主灯(キーライト)にする場合は、比較的暗い室内を移動しながら撮影する時などである。いくら一眼ムービーの高感度特性が高くても、ISO3200以上は画質劣化が顕著である。可能な限り低ISO感度(400以下)で、カラーバランスを維持するのが理想である。しかし、晴天下の屋外であっても被写体や撮影状況によっては必要となるため、素早くLEDライトが装着できるように、常時準備すべきだろう。

補助灯(フィルライト・アクセントライト)として使う

基本的には補助灯として使用することが多いだろう。私の場合はキーライトとして500W/3200Kの写真用フラットレフランプを1灯、もしくは2灯(ゲージを使用した直トレ、または傘バウンス)設置し、これを室内光(地明かり)とミックスさせる。その上で、LEDライトを補助灯とし、人物や静物の陰起こしなどに使用する。主灯は1kwクラスのハロゲンバンクライト(80cm〜100cm程度)の方が効率的だと思うが、移動の際の荷物が多くなるので、レフランプと折りたたみ式のアンブレラを併用することが多い。

LEDライトポジション
panasonic 写真用フラットレフランプ(3200K)

写真用フラットレフランプ(5500K)はHDSLRには向かない

低コストで大光量の写真用フラットレフランプは、ムービー撮影でも有効である。しかし、デイライトタイプ(5500K)のレフランプは、CCDやCMOSの撮像素子では最長波長の赤色光(ディープレッド)を強く反射し、また発光寿命も短いため推奨できない。具体的には、光沢感のある黒(皮ジャン、ダウンジャケット、人物の黒髪など)が、赤茶色に映る現象である。これを回避したければ、ディープレッドカットフィルターを使うか(中望遠以上の焦点距離でないと効果がなく、広角で使うと周辺がシアン被りする)タングステンタイプ(3200K)のレフランプを使用すればよい。但し、高熱を発するので取り扱いには注意が必要。環境光が昼白色の場合は、5500K前後でキーライトを構成する必要があるが、各メーカーが撮影用の蛍光灯ライトを豊富に揃えているため、それらを選択した方が効率的である。

AFのハンチング防止(フォーカスを安定させること)として使う

特に、この役割は暗所や室内で有効である。DSLRで一人で同時にフォーカス、パンニング、ズームをする場合はAFが瞬時に合焦しなければ成立しない。幸いファームウェアのバージョンアップ(Ver.1.1)でAF精度が向上したのは朗報である。しかし、十分な露出値があったとしても、構図内に明度の低い被写体が映ればハンチングが起こる懸念がある。勿論、AFだけで現場を乗り切ることは不可能なため、マニュアルフォーカスに切り替えた際の、ピントのヤマも掴みやすくなる。

LEDライトポジション
レンズ中心の垂直線を基準に、斜め20度の位置にLEDライトを配置
LPL UB-90(ユニバーサルカメラブラケット)を使用。

LEDライトをどの位置に固定すれば良いか?

LEDライトのポジションニングは、レンズ中心の垂直線を基準に、斜め20度の位置に固定した。この位置ならば、カメラ目線の人物でも眩しさを感じさせずに何とか撮影できる。但し、アナウンサーやリポーターなどのプロは適応できても、クライアント側のスタッフ(一般人)には控えた方が良い。テレビのドキュメンタリー番組などでも、基本的に一般人はカメラ目線でインタビューに答えていない。視線はインタビュアーの方にあり、照明とカメラは斜めからというのが一般的である。

LEDライトポジション
LEDライトをサイドに配置、LPL MC-1(ミニクリップスタンド)使用
LPLは豊富なアクセサリーを安価で提供しているため、拡張がしやすい。

これは一つの例のため、個々の撮影スタイルに合わせて最適な位置を検証して欲しい。また、別途で照明がセッティングされている場合は、LEDライトを取り外し、そこに外付けの液晶モニターなどを設置できる。特に三脚でじっくりと撮影する際に、この位置にモニターがあると視線誘導がしやすく便利である。

LEDライトポジション
LEDライトをレンズ下部の三脚部分へ配置

ケルビン値(色温度)は、何を基準に設定するか?

基本的には現場の環境光を基準にするべきだろう。例えば、室内が病院や一般オフィスなどの蛍光灯ベースであれば、LEDライトはデフォルトの変換フィルターなし(6000K)。その場合、経験則ではそれなりに室内の露出値もあるので、2000Lux/50cmクラス以上のLEDライトを補助灯にすれば、効果的に光を回せる。仮に光量が不足しているならば、必要に応じて増灯すればよい。窓から漏れる太陽光が強い場合は、4700kの変換フィルターを使用すると馴染みやすい。勿論、考え方にもよるが、ライトを弱めに照射して現場の雰囲気を大切にするのか、はっきりと光を照射して、被写体の情報を優先するのかは、状況次第である。

コントロールが難しいのは、レストランやホテルのラウンジなどの低照度のタングステン光源下である。この場合、3000K以下になるため、そのまま撮影するとシズル感も発色もでない。まずは3200Kの照明を1灯設置し、LEDライトも同じケルビン値に変換し、カメラ側の設定をケルビン値数値入力で、任意の値に固定した方がよい。その上で白く補正したり、暖色よりにしたりと、モニターを見ながら調整すればよい。特に、GH2のAWBは色かぶりしたり、補正されすぎたりして安定しないため推奨できない。

LBAゼラチンフィルター
FUJI LBA-20、デフォルト光の6000Kから3200K付近まで変換可能。

LPL VL-960C Proは、光量はクラス最高値で全く問題ないが、3200Kへの変換フィルターが標準で付属されていない。そのため現状ではゼラチンフィルター(FUJI LBA-20)を発光面に加工して装着するしかない。実際にLBA-20を全面に貼付けてテストしたが、タングステン光源下での相性はよい。しかし、耐久性が低い薄型ゼラチンフィルター、ポリエステルフィルターなどをどう使うかも悩みどころである。強度のあるLEEのプラスティックフィルターを加工するもよし。タングステン光源下の現場が多い場合には工夫が必要である。尚、マンフロット MAXIMA LED ライト84はVL-960Cより光量もあり、付属フィルターで3200Kまで変換できる。(2012年02月発売)

照度は2000Lux/50cmクラス前後は最低必要!!

最近のモデルは光量が大幅に増し、格安の海外製品も多い。照度は2000Lux/50cmクラス以上(フィルター変換前)は必要ではないだろうか。この程度あれば、ディフューザーや色温度変換フィルターを使って光量が低下したとしても、それなりに光を回せる。まずは試したいという状況なら「ケンコートキナー LUCKY LEDライト LL-30V」で十分だと思う。これでも2010年頃までのフラッグシップ機「Litepanels Micro Pro」より照度が高い。フィルター変換の煩わしさを無くし、よりフレキシブルに色温度をコントロールしたいなら「コメット C-PLUS LED Lightin SOFT 7」がオススメ。これはバッテリー駆動以外にもAC電源で使えて、3200Kで最大照度になる。ややコストが高くても光量が欲しいならば、SONY HVL-LBPB(バッテリー別売)となる。

2011年12月某日

記事一覧に戻る