技術ファイル|映像収録(撮影)編

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デジタル一眼「GH2」とHDMIモニター「CLM-V55」の適合性を検証!

SONY CLM-V55
SONY CLM-V55とGH2をHDMIケーブルで接続

外部HDMIモニターの有効性について

デジタル一眼ムービーが注目され始めた2009−2010年頃は、HDMI端子搭載のikan、Marshall、SWITなどの海外製の小型液晶モニターを接続して使うか、BNC端子搭載のパナソニックやソニーの小型液晶モニターを、blackmagic design等のコンバーター経由で接続するのが主流だった。コンバーター経由の場合は、一眼レフのHDMI出力(mini HDMI端子)を業務用SDI信号(BNC端子)に変換し、2系統に分配してカメラサイドとマスターベースで表示させる手法である。いずれにせよ、今より高額なコストが必要だった。しかし、2011年末時点ではHDMIスルー端子付きモニターや、DSLRを想定した5万円前後の廉価モデルが続々と登場している。ここでは音声も同時に確認できるSONYの5型モデルCLM-V55をGH2に接続し、その適合性について述べたい。

一眼ムービーで撮影する場合、EVFや背面液晶モニターを見ながら撮影することは可能だが、業務用途となると様々なシーンで外付けモニターの必要性が生じてくる。クライアントや現場スタッフへのモニター返しや、撮影後の打ち合わせでは、15インチ以上の中型モニターがあると便利である。また三脚使用時の構図取りやマニュアルでのピントコントロールの際は、カメラに装着できる5〜7型前後の小型モニターが必須である。

デフォルトで接続すると、モニター同士の設定が合っていない!!

通常、HDMIで撮影中の映像を外部出力すると多くのカメラ機種では、背面にある液晶モニターが消えてしまうが、GH2の場合はそのまま表示させ続ける機能がある。(外部モニター表示のみも可能)タッチパネル機能になっているため、外部モニターと同時に使えるのは便利である。(再生時は、外部モニターでしか表示されない)しかし、GH2の液晶設定、CLM-V55の液晶設定がデフォルト(初期値)同士で接続すると、カラーバランス、照度、色温度などの各種設定がバラバラなのだ。そして、この状態で撮影した動画をパソコンで再生すると、GH2側のモニターに近い発色であるが、露出は一段ほどアンダーで、カメラ本体の液晶では目立つマゼンタ被り(下記画像参照)も、実写映像ではそれほど感じない。なぜ、このような違いがあるのだろうか。

SONY CLM-V55
CLM-V55のモニター映像
赤がくすんで茶色よりだが、地味な発色で比較的見たままに近い。

SONY CLM-V55
GH2のモニター映像
露出もオーバーし、明らかにマゼンタよりで高彩度。

撮影状況を整理する

撮影モード:高ビットレート動画(29.97fps)
絞り値:F5.6
シャッタースピード:1/60秒、※SSの基準はfpsの2倍である。
ISO感度:800
ホワイトバランス:オート
フィルムモード:スタンダード
【現場の状況】
夕刻で、既に日が沈み始めて薄暗い。現場は街灯(タングステン光)が地面や被写体に照射され、夕日(太陽光)とのミックス光源下である。

何を基準にカラーバランスを調整するのか!?

デフォルト(初期値)では、以下の3つの色再現に統一性がない。
1.AVCHD変換され、パソコン(カラマネ済)に表示される映像。
2.撮影時に、GH2の背面液晶モニターに表示される映像。
3.撮影時に、HDMIスルー信号でCLM-V55に送られて表示される映像。

このケースではカラー基準は1のAVCHDでフォーマットされ、パソコンに表示される映像でなくてはならない。※HDMIスルー信号を直接キャプチャーする場合は例外。1を無視して2と3のモニターを近似させることは可能だが、それでは意味がない。まず、1に2をマッチングさせ、3を2に合わせるという流れとなる。

GH2側の液晶モニターの設定

これに関しては、外部モニターを使用しなくても必ず実行してもらいたい。デフォルト(初期値)では、GH2の液晶モニター設定はAUTO(自動調光)である。明るい場所では、パネル照度は低く、暗い場所ではパネル照度が高く設定される。1と2の露出値が異なるのはこれが原因なのだ。AUTOのまま撮影してしまうと、編集時に苦労することになる。解除方法は[メニューボタン→マイメニュー→LCD液晶モード→3*]という流れで設定する。A*はオート、1*は明るめ、2*は標準、3*は暗め。この場合、3*が最も1の露出値に近い。

SONY CLM-V55
メニューボタン→マイメニュー→LCD液晶モード→3*
これで液晶パネルの照度が固定され、実際の露出と同等になる。

次に、GH2本体液晶パネルの照度が固定されたことで、露出のバラつきがなくなり、マゼンタ被りも軽減された。しかし、それでも1と比較すると、ややマゼンタ被りしている。ここの調整は、[メニューボタン→マイメニュー→液晶調整→カラー調整]というタスクで、縦のスライダーをグリーン側へ、+1もしくは+2設定する。

勿論、個体差を考慮する必要もあると思うが、GH2本体液晶パネルに上記の二つの設定をすることで、1のAVCHDでフォーマットされ、パソコンに表示される映像に、かなり近い状態になった。ところで、パナソニックの技術サポートセンターへGH2の背面液晶モニターの色温度を問い合わせてみた。メーカーとして公式に発表していないというのが正式な回答だったが、6300K以上でテレビやパソコン表示に合わせているという補足説明があった。発色からして9300K付近だろう。

SONY CLM-V55の設定

デフォルト(初期値)では、モニター色温度が6300Kのため、パソコン表示に合わせて9300Kに設定。(見た目に近いのは6300K)そして、コントラストを若干上げて55に設定する。この程度で適正値に近くなった。これでもグレーバランスは2と3はかなり近く、液晶の照度もほぼ同じである。 しかし、モニターのカラーアルゴリズムがGH2側と異なるため、CLM-V55側の明るさ、コントラスト、彩度などを微調整しても、色相だけは同じにできない。無彩色(白・黒・グレー)は同じように見えても、PanasonicとSONYではRGBの発色傾向が異なるのだ。SONY αシリーズ、NEXシリーズとは同期していると思うが、傾向としてはブルー(青空)やグリーン(新緑)の色再現に優れており、全体的に忠実なカラーバランスである。但し、赤系のダルトーンは回避できない。

GH2側は、AVCHDフォーマット時は基本的に赤系(暖色)の彩度が高く、全体的にみても高彩度ハイコントラスト(スタンダード設定)である。勿論、フィルムモードを変更したり、各種現像パラメーターを微調整してCLM-V55の発色に近づけることは可能だと思うが、それでも一致は難しいだろう。それにカラーマッチングにこだわるのであれば、あくまでもGH2側にCLM-V55を適合させなければ意味がない。

結論

GH2の背面液晶モニターで、色温度やフィルムモードの設定をし、CLM-V55で構図、ピント、露出を確認する。慣れれば割り切って使用できる。(最近は撮影時のCLM-V55の設定はピーキングモードに固定することが多い)GH2の液晶モニターを折りたたみ、CLM-V55のみで動画撮影するのは推奨できない。発色そのものが異なるからだ。撮影中のスルーデータへも、ホワイトバランスやフィルムモードの設定変更は反映されるが、GH2側のモニターとはかなり異なる。やはり完全に役割を分離し、構図、露出、ピント、再生確認用と割り切った方がいいだろう。これだけでもCLM-V55の貢献度はかなり高い。加えてインタビューなどの収録後に音声がすぐに確認できるのも便利である。基本的にスピーカー内蔵で音声が同時に確認できる小型モニターはSONYしかない。

SONY CLM-V55
マッチング後のモニター
モニター照度、カラーバランスは大幅に改善されたが、発色そのものは異なる。

補足するが、スチル撮影でHDMI外部モニターを使用すると、いくつか機能制限が発生する。最も難点なのが、写真の画像縦横比率が16:9になり、記録画素数も14Mに固定されてしまうことである。メーカーにも確認したが、これは「製品の仕様」とのこと。HDMI端子がケーブルを認識した時点で、強制的にカメラ側の設定が16:9のハイビジョン仕様になる。(撮影モードを写真にし、3:2にしても設定されない)但し、写真のJPG、RAW設定は変更できる。通常16:9はスチルでは使用しないので、3:2もしくは4:3を選択したい時はHDMI端子は使用せず、カメラ単体で撮影しなければならない。

2011年12月

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