技術ファイル|音声収録(録音)編

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デジタル一眼ムービーに最適なICレコーダーとは!?


GH2とPCM-D50の映像と音声の同期

PCM-D50にECM-CG50(ショットガンマイク)を外部マイク接続、PCM-D50からFOSTEX PC-1e経由でGH2のマイク入力へ接続。音声はカメラ側の録音データで未調整。FOSTEX PC-1eで、デジタル一眼レフとICレコーダーを正常にマッチングできることが証明された。
本稿[2.アッテネーター(減衰器)を使用する]を参照。

ECM-CG50
ECM-CG50
ECM-CG50+PCM-D50+PC1e+GH2

デジタル一眼ムービーの欠点の一つに録音機能の脆弱性がある。必然的に外部レコーダーの使用を余儀なくされるが、その選択は何を基準にすればよいのか。映像と音声は別録なのか、同録なのか、同録ならヘッドホンでモニターし、カメラ側に音声出力する必要がある。内蔵マイク録音か、外部マイク録音か、マイク本数や指向性、ファンタムパワーやプラグインパワーへの対応、入出力端子の種類。これらに必要な情報を一つ一つ整理して、客観的に検討しなくてはならない。ここではカメラの機動力を最大限に考慮し、主にICレコーダーについて検証したい。

主要メーカーのICレコーダー(※リスト順位不同)

入出力端子について

入出力端子は重要な判断基準の一つだが、必要に応じて変換や拡張で補うことができる。Zoom H4nはヘッドホンアウトとラインアウト統合型、Roland R-26はヘッドホンアウトしかない。このような状況で出力を二分配したければ変換プラグで対応できる。PCM-D50は、XLRバランス接続に非対応だが、SONY XLR-1、ART CleanBoxPro、TASCAM iXZなどで拡張できる。但し、レコーダー本体がバランス(平衡伝送)入力に対応していないため、経由地点からレコーダーまではアンバランス(不平衡伝送)になる。機動力を多少犠牲にしてもよいならば、BEHRINGER XENYX1002Bなどのバッテリー駆動(ファンタム可)の小型ミキサーを使う手段もある。またファンタムパワー、プラグインパワーは外部供給ユニットもあるが、基本的にレコーダー本体から確保するか、電源供給型マイクを選択した方がよい。

注意点としては、こうした変換や拡張は多様な機器を用いて実現できたとしても、必要最低限にするべきである。複雑になるほど信号対雑音比(SN比)の悪化や不用意な雑音の混入を招く恐れがある。但し誤解のないよう補足するが、許容範囲でマッチングできるならば神経質になる必要はない。しかし、2010年頃からXLRバランス入力に対応し、ヘッドホンアウトとラインアウトが独立しているという理由で、DR-100(現行品はDR-100MKⅡ)を選択するユーザーが増えたようである。これは変換の紛らわしさを回避するユーザーが多いということだが、2012年以降はヘッドフォン端子搭載の一眼レフ、DSLR専用ミキサーの普及に伴い、技術的な諸問題が解決されつつある。

ヘッドフォン出力のないカメラからの、音声の戻りを確認する方法はないか?
(DMC-GH2の例)
コンポジット出力の利用
GH2本体のアナログコンポジット出力を利用すれば、再生時の音声であればヘッドフォンでモニタリングできる。その場合、コンポジット出力端子(RCA赤・白)をステレオミニに変換し、小型のヘッドフォンアンプやICレコーダーのライン入力に接続する。そこからモニタリングすれば、カメラ側からの音声の戻りが確認できる。

HDMI出力の利用
GH2のHDMI出力は、スルー状態では映像しか出力されない。コンポジット出力同様で、再生時の音声は出力されるため、ヘッドフォン端子付のHDMIモニターを使えば、カメラ側からの音声の戻りが確認できる。

いずれの手法もリハーサルで音声チェックし、収録中はレベルメーターでチェックし、さらに再生時に音声チェックをするという流れで対応できる現場ならば、このような方法で対応できる。また、マイクケーブルを二分配して一方をカメラへ送り、もう一方を小型のヘッドフォンアンプなどに送ってモニタリングする手法もある。

マイク入力について

ファンタムパワー入力(XLR/バランス)対応は、1〜5の機種、プラグインパワー入力(3.5mmステレオミニ/アンバランス)対応は、6、7の機種。両対応なら2、4、5の機種となる。 カメラ上部に外部マイクを固定し、レコーダーから数10センチの距離で使用するならば(XLR/バランス)入力に固執する必要はない。レコーダーからキャノンケーブルで5メートル程度延長し、マイクブームなどでオーバートップで録音する場合には(XLR/バランス)入力が有効である。そして、標準装備されている内蔵マイクも無視できない。内蔵マイクで録音した方が合理的な状況もあるだろう。その際は、角度調整の有無、指向性の選択、感度、録音レベル、信号対雑音比(SN比)などを比較しながら検討する。

fostex pc-1e
コンデンサーマイクはデリケートなため、レコーダーの内蔵マイクや外部マイク共に
必ずウィンドジャマー(風防)で保護。

カメラへの音声出力(映像と音声の同期)について

レコーダー側のラインアウトとカメラ側のマイクインでは、インピーダンス(抵抗値)に差があるため、そのまま接続すると音が著しく歪む。以下のような複数の解決策があるが、どの音声データをマスター音源にするかでも、結論に相違がある。

1.抵抗ケーブルを使用する。
入出力のインピーダンスが規格化されてないため、市販の抵抗ケーブルでは、機器同士を完全にマッチングさせることが難しい。仕様を公開している機器同士で比較すれば分かるが、意外と抵抗値に幅がある。従って専門業者にテスターで数値を計測してもらい、カスタムケーブルをオーダーするのが現実的ではないだろうか。知識と技術があるならば、自作してもよい。ここでは、CANON 5D2とSONY PCM-D50でのアッテネートケーブルの作成例が公開されている。

2.アッテネーター(減衰器)を使用する。
アッテネーター(もしくは減衰機能のある代用品)は数多くの種類がある。ネット上やメディア(業界誌等)では、特定のアッテネーターが推奨されているが、実はマッチング可能なものはかなり多い。汎用性を望むならば二系統以上のREXER MX-4STなどのパッシブミキサー、ART SPLIT Mix4などのパッシブスプリッターがある。一系統なら、FOSTEX PC-1e、BIRD ELECTRON DJ-6などがある。二系統の場合、ART SPLIT Mix4であれば、マイクとレコーダー間で一系統(CH)、レコーダーとカメラ間で一系統(CH)の減衰効果を可変で適用できる。REXER MX-4STは、アウトプットが二つあるが、これは同じ信号(マスターアウト)が出力される。ガンマイク1本+ワイヤレス1波などをMX-4STでミキシングさせて、レコーダーに2系統のミックス信号を送ることができる。

理論上はパッシブ回路搭載で可変レベルコントロールがあれば、何でも代用できるのだ。電源も必要ない。最近はユーストリーム配信やiphone、ipad関係の機材(バード電子など)が安価で豊富に揃っている。一つ一つテストすれば、ゴロゴロと安価でマッチング可能なものがでてくるだろう。

fostex pc-1e
FOSTEX PC-1eをSONY VCT-55LH(ブラケット)にマウント

これはSONY PCM-D50+FOSTEX PC-1e(B)+GH2の一系統マッチングの例である。ラインアウト→マイクインもヘッドホンアウト→マイクインも可変でマッチングできる。但し、出力端子がRCAピンプラグなので、カメラに2.5mmステレオミニプラグで入力できるように変換しなければならない。この仕様では変換プラグは使用せず、ダイレクトに接続できるようにカスタムケーブルを使用している。SONYαシリーズなどの入力側が3.5mmステレオミニ端子の場合は、BIRD ELECTRON DJ-6ならば変換なしで使用できる。

カメラとのマッチングの仕方は、GH2側の録音レベルを1にし、レコーダーとの間にPC-1eを接続するだけ。レコーダー側のメーターとカメラ側のメーターの振れ幅が同じになるようにPC-1eのボリュームを調整する。コンパクトでデザインもよく、コストパフォーマンスにも優れているパッシブアッテネーター(製品名:PC-1e ボリュームコントローラー)である。価格は2,100円(税込)。

3.DSLR専用ミキサーを使用する。
ビーチテックのDXA-SLR、DXA-5Da、アツデンのFMX-DSLR(2012年4月発売)などを使用する。これらのミキサーは、DSLR用に開発されているため汎用性が高い。レコーダーのラインアウト→ミキサーのラインインからマイクアウト→カメラのマイクインという接続が効率的にできる。また、FOSTEXからDC-R302(2012年2月発売)という高性能ミキサー&レコーダーも発売されている。2012年以降、CANON EOS 5D Mark III、NIKON D4、D800シリーズには、ヘッドフォン端子が搭載され、国内メーカーからのDSLR専用ミキサーのリリースも相次いでいる。黎明期からのウィークポイントであった音声収録に関する諸問題は解決されつつある。

dc-r302
DC-R302とGH2の接続ケーブルはオヤイデのカスタムケーブルを使用。
dc-r302
FOSTEX DC-R302(3chアナログミキサー+デジタルステレオレコーダー)
マルチトラック非対応なので、収録時に各入力バランスをしっかりと調整しなければならない。
ワイヤレス2波+ガンマイク1本という組み合わせも可能。

2を選択し、カメラ側の録音データをマスターにしたいと考えた場合は、以下の重要な注意点がある。それはアンバランス接続による雑音の混入を防ぐためにも、ケーブルの距離(長さ)、ケーブルの性能に最大限の配慮をすることである。

当初、一般的な市販ケーブルと変換プラグを使い、PCM-D50→PC-1e→GH2と接続していたが、オヤイデ電気に、考えられる限りの仕様でカスタムケーブルをフルオーダーした。高性能ケーブルと真鍮製シルバーロジウム仕上げのプラグで、技術料込みで1万円程(納期二週間)かかったが、特定の周波数帯では明らかに音質がクリアになり、ルックスや操作性も著しく向上した。

fostex pc-1e
2.5mmステレオミニ入力を変換プラグなしで、ダイレクトにケーブル接続。
fostex pc-1e
市販のケーブルと変換プラグで接続しようとすると、3つのパーツが必要。

GH2のユーザーなら分かるだろうが、3.5mmステレオミニ→2.5mmステレオミニへの変換プラグを常時使用するのは見た目も悪く面倒である。カメラ本体が2.5mmステレオミニ入力なので継続して使うならば、それに適合させるのが望ましい。また、ケーブルをブラブラさせるのも、グルグル巻きにするのもアンバランス接続では避けたい。自分が決めた最適なポジションから、適度な距離でケーブルマッチングさせるのが理想だろう。しかし、別録(デュアルシステムサウンド)にして、この手の苦労から解放されるというのも一つの手段である。そうすれば、様々なレコーダーが使いたい放題である。但し、編集時に映像と音声をどのように同期させるかという新たな問題が発生する。

以上、簡単ではあるがレコーダーの選択時に最も影響する基準を考慮し、入出力端子、マイク入力、カメラへの音声出力という三視点から考察してみた。尚、音の解像度については、KORG MR-2(1bit DSD@2.8224MHzから、PCM24bit@192kHz)以外は、最大PCM24bit@96kHzなので割愛した。仕様についてもアップデートなどで変更される可能性があるため、それらを含めて記事を参考にして欲しい。
2011年10月(初稿)
2012年07月(一部更新)

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