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ICレコーダー「PCM-D50」でナレーションを録る!

プロモーション用の映像音源(参考データ)

レコーダー:SONY PCM-D50(内蔵マイク録音)
レコーディング時の設定:WAV(24bit 96kHz)
アップロード音源:MP3(ビットレート64kbps)
完パケデータ:MPEG2 DVD
ナレーションの録音:PCM-D50
効果音の録音:DMW-MS1+GH2

報道用のアナウンス音源(参考データ)

レコーダー:SONY PCM-D50(外部マイク録音)
レコーディング時の設定:WAV(24bit 96kHz)
アップロード音源:MP3(ビットレート64kbps)
外部マイク:SONY ECM-CG50

PCM-D50
SONY PCM-D50

どのようなシステムで録るのか?

複数の情報を系統別に深化させ、一つのフォーマットとして構築することは、デジタル領域ならではのシステムではない。人が合理的なモノづくりを意識して以降、古くから脈々と受け継がれてきたことである。

デジタルによる映像制作とは、カメラやマイクなどのハードウェアを使って蒐集したアナログ情報をbit化(AD変換)し、ノンリニア編集ソフトなどを使って新たな情報を構築する。そして最終的に一つの映像フォーマットとして書き出す作業である。ICレコーダーでナレーションを録るという作業は、その中の一系統の音声トラック用の音源を制作することである。

ナレーションのレコーディングには、以下の手法が考えられる。

PCM-D50
今回使用したレコーディング機材一式

レコーダー以外の周辺機器は何が必要なのか?

最低限必要な周辺機器

二分配プラグ
モニター返しのため、ヘッドフォン延長コードと分配プラグは必須。

マイクを固定するマイクスタンド、もしくはミニ三脚。ブレス音、リップノイズ、歯擦音を軽減させるためのポップガード、もしくはウィンドジャマー。室内残響音をカットするカーテン(状況により使用)。レコーダー本体を遠隔操作するためのリモートコントローラー。ナレーターに音声を戻すためのモニターヘッドフォン。エンジニア側が音声チェックするためのモニターイヤフォン。レコーダー側のヘッドフォン端子は一つしかないので、延長コードと分配プラグを使用する。端子に直接分配プラグを接続すると、プラグの重みで内部端子が歪み、接触が悪くなる恐れがある。また、電子メトロノームを使用したい場合は、外部ミキサーを使用するか、メトロノーム機能のあるレコーダー(Zoom h4n)を選択する。

PCM-D50
マイク角度はXY90度ポジション

内蔵マイクをどのように使うのか?

PCM-D50の内蔵マイク角度は、XY90度のポジションへ指向性の調整をする。しかし、より指向性の狭いZoom H2nを使い、MS30度のポジションに設定するのも有効である。マイクの指向性が狭い程、余分な収音を防げる。しかし、防音されたスタジオ内での余分な音とは何だろうか。それは室内で自然発生する残響音である。実はこれが曲者なのだ。

プロ仕様のレコーディングスタジオやMAスタジオならば、ボーカルブースは残響音がカットされるように設計されている。そうではない環境であれば、リフレクションフィルターなどでカットするか、超指向性の外部マイクを使用するべきだろう。内蔵マイクでの対策としては、マイク位置や角度を変えてみたり、ウィンドジャマーを装着することで軽減させることができる。また、ソフトウェアで修正する方法もあるが、録音時に回避するのが基本である。

内蔵マイクか?外部マイクか?

勿論、スタジオ環境や録音ジャンルによっては、より高性能な外部マイクがよい。しかし、このケースでは内蔵マイクを使用した。PCM-D50は数あるICレコーダーの中でも高性能を誇るソニーの傑作である。クリアでノイズも少なく、録音レベルも高い。生楽器やオペラを録音するわけではなく、人が日常的に発するレベルの周波数帯であり、特にダイナミックレンジや音圧耐性が必要なわけでもない。中途半端なミキサーや外部マイクを経由させるより、クリアでSN比も稼げるという判断である。

よく比較されるTASCAM DR-100については、まずマイク録音レベルが低い時点で業務用途には向いていない。内蔵マイクの角度変更もできず、メーターのピーク(ヤマ)も捉え難い。メーカーサイドも自認していたようで、後継機種のDR-100MKIIでは、かなり改善してきた。

PCM-D50
レコーディング環境

録音レベルについて

各メーカーの製品マニュアルなどでは、-12db前後が推奨値。音声レベルを整合させるための基準信号の周波数1KHが-20dbのため、-20dbから-12db前後あれば問題ない。ナレーターの口元とマイクの距離は声量や声質によって異なるが、どの位置がベストになるのか、リハーサルで入念にチェックしなければならない。コツは録音レベルをあまり上げることなく、レベルメーターの振れ幅をベストの位置に持ってくることである。プロのナレーターとのスタジオ収録なら簡単だが、ロケでの一般人の音声収録になると難易度が上がる。

また、コマーシャル系のナレーションは感情の起伏を声で表現するため、段落ごとの声量差が激しく、状況によっては左手でリモコンを、右手で録音レベルのフェーダーを操作しなくてはならない。タッチノイズ防止のためにも、リモコンは必須である。最大ピークを-6db前後と想定すると、通常の読みは-12db前後でよい。報道用のニュース原稿、もしくは同ジャンルのナレーションの場合は、常に-20dbから-12dbの間に収まるように調整する。一通りの録音が済んだら、レコーダーとミキサーを接続し、外部スピーカーから収録音を流す。そうすれば、エンジニア側もナレーター側も、お互いの意見を交えながらの音声チェックがしやすい。
2011年11月

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