技術ファイル|映像編集 編

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蛍光灯フリッカー現象(ちらつき)の対策、ビデオ編集時の除去方法!

東日本(電源周波数50Hz)エリアの蛍光灯下で1/60のシャッタースピードで動画撮影をすると、フリッカー(ちらつき)が発生する。これは蛍光灯の点滅スピードとシャッタースピードが同期していないからだ。従ってモニターを確認しながらフリッカーが発生しないようにシャッタースピードを調整(1/50、1/100など)すれば、基本的には、一部の例外を除いてフリッカーの発生を回避(※1)できる。東日本で活動するプロのビデオカメラマンなら、常にフリッカー対策を意識しているだろう。しかし、ここでは誤ってフリッカーが発生した状態で収録してしまい、その後の編集作業で除去する対処法を紹介したい。

蛍光灯
http://ja.wikipedia.org/wiki/

微弱のフリッカーの場合、カメラに標準装備の小型モニターでは確認できない!?

通常、5型程度の外部モニターで確認していれば、微弱でもフリッカーの発生は確認できる。筆者は多くの撮影が西日本(60Hz)エリアなので、フレームレートが29.97fpsの場合は、一般的な基準値(フレームレートの2倍)1/60で撮影する。西日本であれば電源周波数が60Hzなので、まずフリッカーは発生しない。しかし、東日本(50Hz)エリアにロケに行った際に、蛍光灯フリッカーの発生を見落としていたことがある。太陽光下のテラス席での収録だったが、薄らと建物側から蛍光灯が漏れており、微弱のフリッカーの影響を受けていたのだ。勿論、関東の撮影では“” 60fps=蛍光灯フリッカー ”というのが頭の片隅にはあったが、DSLRでのステディカム撮影だったので外部モニターを装着しておらず、3型の標準モニターだけではフリッカーの発生を確認できなかった。

フリッカー部分を使用せずに編集する方法を考える

東日本エリアのロケから事務所の編集室に戻り、作業中に問題のシーンが発覚した。DSLRのプレビュー画面では確認できないほど微弱だが、パソコンだとフリッカーがやや目立つ。致命的ではなかったが映像として必要なシーンだったので、該当部分をカットしたり、静止画像を切り出してディゾルフで繋いだり、スライドさせる編集法では回避できない。ブラー処理をすれば、指摘しなければ分からないレベルになったが、そのシーンだけボヤけた眠たい映像になってしまう。

フリッカーの除去方法を検証する

初めに試したのが、PremiereProのモーションエフェクトにある「アンチフリッカー」。名前からして、すぐに解決しそうなイメージである。期待しながらスライダーをドラッグし、強度を調整してレンダリングしてみた。しかし、全く効果が確認できなかった。最大強度にしてもダメ。この機能はインターレースのちらつき抑制なのだろう。そして次に試したのが、AfterEffectsのインターレースのちらつき削除。「エフェクト」→「ブラー&シャープ」→「インターレースのちらつき削除」というタスクの流れだが、予想通り、インターレースのちらつき削除の機能なので全く効果なし。

有償プラグインでの除去

Premiere Pro、AfterEffects、Final Cut Proなどのサードパーティー製の有償プラグインには、蛍光灯フリッカーを除去できるものがある。実際にフリッカーの除去効果を確認できるサンプルムービーを公開しているプラグインもあるが、業務用プラグインのためマシン環境の構築や費用対効果を含めて慎重に検討するべきだろう。ここでは有償プラグインについは割愛する。

フリーソフトウェア “ AviUtl ” と、プラグイン“ 60fpsフリッカ軽減 “ で解決か?

何と、Windowsのフリーソフトウェアで蛍光灯フリッカーを除去する秀逸なソフトとプラグインがあったのだ。その名はAviUtlと60fpsフリッカ軽減。筆者の編集環境は、MacとWinのデュアルブート仕様なので早速「AviUtl」をダウンロードし、「60fpsフリッカ軽減」と共にインストールして試してみた。AviUtlは本体をインストールするだけでは正常にプラグインが動作しない。参照URLを参考にし、各々のPC環境に合わせた設定をして欲しい。
参照URL:フリーソフトの使い方解説サイト AviUtl

まず、対象ファイルの必要なシーンを.AVIで書き出す。それをAviUtlに読み込む。プラグインを選択し、60fpsフリッカ軽減を実行。このプラグインは処理に負荷がかかるため、ハイスペックなマシンが必要である。結果的に50パーセント弱の値で、見事にフリッカーが除去されたのだ。画質の劣化も眠たさも感じられない。これは「時間軸方向にアダマール変換し、フリッカーと同じ周期の周波数成分を調整する」という機能らしいが、フリーソフトウェアで予想以上の効果が発揮されたため、初めて使った時は非常に驚いた。

AviUtlはデフォルトではAVIしか対応していないが、専用プラグインを使うことでmovやmp4を読む込むことが可能になる。唯一、動作環境の構築に若干手間がかかるが、フリーソフトウェアなので、そうした仕様にも理解を示し、寧ろ開発者を尊重すべきだろう。

(※1)蛍光灯にはスタータタイプ , ラピッドスタートタイプ , 高周波点灯タイプ(インバータ)があり、それぞれの性質が異なる。特に安価で広く普及しているスタータータイプは、経年劣化により点滅スピードが不規則になるため、SSを調整しても同期できないことは少なくはない。

実際に薄暗い倉庫や街灯などでは点滅が人の眼で確認できるものもある。経験則では飲食店の厨房や、デパ地下などに複数設置されている業務用ショーケース内の蛍光灯などは、いくらSSを調整してもフリッカーを防げない状況があった。キー局のニュース映像などでもフリッカーが発生しているシーンもある。従ってSSの調整で簡単にフリッカーを防げると、安易に考えないことを留意しなくてはならない。

貸し会議室や店舗の蛍光灯などは、物件の管理者側が定期的に蛍光灯を交換していたり、インバータータイプも多いため、概ねSS1/100でフリッカーの発生を回避することができる。現実的にはSS対策をしてもフリッカーが発生してしまい、その上でどうしてもフリッカー部分を削除しなくてはならない時に、AviUtlの「60fpsフリッカ軽減」を使用するのが賢明だろう。

2012.03

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