技術ファイル|AG-AF105A(オペレーション)編

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Panasonic AG-AF105A、シネライクガンマと階調の検証!

ISO200、F0.95、SS1/60、29.97fps。 γCURVE、MATRIX TABLE、DRS(ダイナミック・レンジ・ストレッチャー)の設定は、埋め込み動画を参照。AVCHDの撮って出し(未調整)

m43規格、唯一の業務用カムコーダーAG-AF105A

AG-AF105Aは、2010年に発売された前機種AG-AF105のマイナーチェンジ版で、ベースは数世代前のビデオカメラである。logにも非対応だが、マイクロフォーサーズセンサー搭載の安価な業務用ビデオカメラであることを踏まえれば、それなりの満足感は得られると思う。必要な業務用端子が一通り揃い、NDフィルター、ガンマカーブ(ビデオ用)、HD-SDI出力(10bit 4:2:2)などが装備され、サービス品を除外すると実質21万程度(2013年6月時点)だ。本体の音声レコーダーも、リニアPCMとDolby Digitalの切替が可能。前機種では合焦が難しかったフォーカスも、フォーカスアシスト機能のExpand(拡大)が追加され、IN RED(ピーキング)、フォーカスバー(フォーカスポイント)との組み合わせで合焦精度の高いマニュアルフォーカスが可能になった。

しかし、EVFの倍率や解像度が低いため緻密なピント合わせが難しく、サイドモニターとEVFの発色もかなり異なる。恐らく調整しても完全に一致させることはできないのではないだろうか。また、AFに関してもGH3よりも劣り、特に中望遠域以上では顕著にその違いがでる。2010年の技術水準がベースのため、後発のDSLRに劣る部分もあるが、特にワンマンの場合はAFがあれば撮影の幅が広がる。

そして、ある意味で最も致命的なのは、AVCCAMシリーズのAVCHD仕様にも関わらず、SDカードでの2枚同時記録ができないことだ。シネライクな性質上、メーカー側はSDカードでの内部記録とHD-SDI出力(10bit 4:2:2)での外部収録を推奨したいのだろうが、下位機種のAG-AC90(実売18万)でも対応しているため、すぐにでもファームアップで対応してもらいたいものだ。105Aは制作系の業務用ビデオカメラなので、長回し指向のリレー記録よりデュアル記録を優先すべきなのだ。

AG-AF105A
メガネ着用時でも見やすい、露出の確認には必需品。

明るい単焦点レンズや標準AFズームレンズ、外部レコーダーも充実してきた!

NOKTON 42.5mm F0.95の発売に伴い、これで広角から中望遠域まで3本のm43単焦点マニュアルレンズが揃った。既に純正のF2.8通しのAFズームレンズが2本、換算24mm〜200mmまでをカバーしている。マニュアルレンズに関しては他でも代用できるが、AFズームレンズはそうはいかない。一般的なビデオカメラ的な表現をする際は、高速AF対応(純正が最もAFが正確で早い)のレンズがあると便利である。外部レコーダーも実売20万円以下の選択肢が増え、低予算で導入できる大判センサーカメラの種類も増えてきた。2013年より、本格的な大判センサー時代が到来したが、実際に一眼動画を業務用途にしていたプロユーザーの多くが、NEX-FS700J、NEX-EA50JH、EOS C100、AG-AF105A、Blackmagic Cinema Cameraなどの手頃な価格帯のシステムへ変更している。

AG-AF105A
一見するとオペレーションが複雑そうだが、小一時間も操作すれば慣れる。
音声レベル調整(ツマミ)の操作性が低いので、現実的にはミキサー経由。

本題の画質はいかに!?

ここからが主題だが、まずは参照動画を確認して欲しい。一般的なDSLRよりはダイナミックレンジが広く、撮って出しにしては上出来だ。しかし、ノーマルガンマと二つのシネライクガンマを、どのように使い分けるかが難しい。7つのガンマカーブとDRS(ダイナミック・レンジ・ストレッチャー)は、パナソニックの業務機なら、P2シリーズでもAVCCAMシリーズでも装備される定番のカラーアルゴリズム。CINELIKE-Vは高彩度高コントラスト、CINELIKE-Dはダイナミックレンジ優先の落ち着いた色調だ。CINELIKE-Dはデフォルトでは地味な発色だが絵作りがしやすい。2つのモードを同じ構図で比較してしまうと、CINELIKE-Dが低コントラストでフラットに感じるだろうが、何も視聴者が2つを比較するわけではない。参照動画は未調整なので、どちらかのモードを基準にし、必要に応じて後処理すればよいのではないだろうか。DRSを設定しなければ、ノイズの少ないクリアな状態は保てる。

AG-AF105A
7モードのガンマカーブ設定、言語は日本語、英語のみ

DRS(ダイナミック・レンジ・ストレッチャー)の有効性

正直、DRSを無理に使う必要はないと思う。参照動画のように、DRSで拡張するとダイナミックレンジと引き換えに、カラーバランスが崩れてシャドウノイズが目立つ。感覚的には強引に暗部を持ち上げているだけのようだ。通常の晴天の屋外撮影なら、ガンマカーブ + ポスト処理で対応できるのではないだろうか。サンプル映像と肉眼との比較を考慮すると、いずれもCINELIKE-D、DRS OFFをベースにするのが無難だろう。

AG-AF105A
3段階のDRS(ダイナミック・レンジ・ストレッチャー)
設定画面の背景に被写体が表示(この場合は白ボードが表示)され、加減を確認できる。

まず実際のディティールや発色、シャドウの強弱を基準とし、どこが見えてどこが見にくいのかを判断する。人の視覚で見にくい部分なら、映像で明確に再現しては不自然な場合もあるだろうし、その逆でDRSを拡張した結果、カラーバランスが破綻してしまうなら、それもまた不自然だ。個人的には特別な理由がない限り、このように判断している。建物は肉眼では縁側のディティールまで認識できるが、105Aでは01:29を基準とし、後処理で調整したいところだ。勿論、好みにもよるだろうが、銅像だけならCINELIKE-V DRS OFFでも構わない。

AG-AF105A
4モードのマトリクステーブル

マトリクステーブルは使えるモードが限られる

0:16でマトリクスをNORMAL2に変更している。NORMAL2とは、野外やハロゲンランプ光源下で(NORMALより)高彩度にするモードだが、このケースでは空のブルーが飛んでしまい、やや全体的にマゼンタ被りしている。おそらくシネライクガンマ設定時は、マトリクスもシネライクに最適化されている。一つ一つ試して、光源ごとにマトリクスの傾向を把握するしかないが、シネライクガンマ設定時はマトリクスもシネライクで問題ないだろう。しかし、NORMAL2はシャドウが締まるため、タングステン環境でDRSの拡張ノイズが目立つ時には有効である。

この他にも、各種パラメーター設定(色相、彩度、輪郭、スキントーン、ペデスタル等)があるが、現実問題としてガンマカーブ、マトリクス、DRS設定以外は、後処理(グレーディング、カラコレ)で対応した方が撮影に集中できるのではないだろうか。勿論、撮影時に好みのモードへのカスタムが可能であり、予め、工場出荷時に6つのシーンファイルも設定されているため、まずはこれらを試して発色傾向を把握しておくのが無難だろう。

2013.07


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