技術ファイル|映像収録(撮影)編

撮影技術会社

Valid XHTML 1.1 正当なCSSです!

一眼動画比較、一眼レフの衰退とミラーレス一眼の躍進!GH4 α7R

一眼系のカメラと言えば、一眼レフタイプとミラーレス一眼タイプがあるが、写真だけでなく動画も撮れるのが一般的だ。しかし、いずれにもメリットとデメリットがある。ここでは動画機能を中心に両者を比較したい。

動画撮影には一眼レフより、ミラーレス一眼が有利!

コンパクトな構造に高い機能性、動画撮影に適した交換レンズ群、導入コストを含めて動画撮影に有利なのはミラーレス一眼である。業務レベルのスチル性能では一眼レフに軍配が上がるが、動画に関しては一眼レフのメリットは限定的である。初期は被写界深度が浅いフルサイズセンサー搭載、実測値40Mbpsのハイビットレート収録としてEOS 5D Mark IIが注目された。しかし、5年余の月日が形勢を逆転させ、m43レンズのNOKTON F0.95シリーズの登場とフルサイズセンサー化(SONY α7、α7R)などで、ミラーレス一眼でも大きなボケが得られるようになり、さらにハイビットレートモデル(GH3)も登場した。既に動画に関しては、一眼レフよりミラーレス一眼の優位性が高くなっている。

SONY α7R
フルサイズミラーレス一眼 SONY α7R
http://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7R/

昨年、SONYからフルサイズミラーレス一眼のフラッグシップα7Rが発売された。プロユースも想定されており、α NEX-7以上の動画機能が搭載された。

  1. 色深度8bit 4:2:0(HDMI非圧縮出力)
  2. エンベデッドオーディオ対応(HDMI映像音声出力)
  3. AVCHD Ver.2.0(1080p/60・60i・24fps)、MP4(1440×1080p/30p)
  4. 連続撮影時間、約29分(すべてのファイル形式)
  5. マニュアル収録可(映像音声)
  6. ヘッドフォン出力
  7. 光学ローパスフィルターレス仕様
  8. ファストインテリジェントAF
  9. 実売価格173,500円(2014年2月)

特筆は1、2、5、6である。この部分の機能強化はかなり大きい。HDMI非圧縮出力は、スタンバイ状態では映像のみ、REC状態で映像と音声が同時出力される。

DMC-GH4
DMC-GH4
DMC-GH4
LUMIX DMC-GH4
GH4+業務用インターフェイスユニット
http://panasonic.jp/dc/gh4/spec.html

別売りの業務用インターフェイスユニット(XLR端子、HD-SDI端子付)も同時発表し、4K(100Mbps)、FHD(200Mbps)、10bit 4:2:2HDMI出力等、GH4はプロもアマも包括する超ハイスペックマシンである。実質的にはAG-AF105A、GH3両方を統合したような仕様であり、民生(GH4)、業務用(AG-GH4U)の両方のチャンネルから発売される。カラーバー、ピーキング、ゼブラ、ガンマカーブ追加を含め、もはや動画に関しては完全に業務機である。

実際の映像を確認すると、(GH3と比較して)4Kの解像感よりも、ダイナミックレンジの広がりを確認できる。新規追加のパラメーター機能でフラット寄りな撮影ができれば、編集時の自由度が増しそうだ。特にコントラストの高い環境下では白トビや黒ツブレ等の犠牲を払いながら露出調整をする必要があるが、これらの改善に期待したい。

ミラーレス一眼のメリット

こちらの記事を参照(ミラーレス一眼、動画撮影機能を比較!GH3・NEX-7・E-M5)

一眼レフのメリット(ミラーレス一眼にないメリットと機能)

  1. 一眼レフカメラ本体(EOS等)やレンズ資産(EFマウント等)を保有していれば有効利用が可能。
  2. 業務レベルの静止画機能と動画機能の併用。
  3. 色深度8bit 4:2:2HDMI出力。(D4、D800、5D Mark III
  4. 対象機種別(D800、5D Mark III等)の豊富なサードパーティー製品。

仮に、これから動画だけを始めるなら、事実上1しかメリットが少ない。3は、グレーディング耐性やクロマキー合成などで若干有利になるが、10bit処理ほどの恩恵はない。4は、その多くがシネスタイルへと拡張する映画製作者向けの業務用製品(リグ、ケージ、マットボックス、フォローフォーカス等)だが、2014年となっては(個人の嗜好を除けば)一眼レフのシネスタイルは非現実的な選択と言わざるを得ない。他にローコストで合理的な選択肢があるからだ。

クロジール
シネスタイルに拡張されたEOS 5D Mark III
http://www.chrosziel.com/

ここでは一眼レフのムービー機能を否定しているわけではない。カメラ本体やレンズ資産がある場合、より高度なスチル機能と併用したい場合にはメリットが多い。今後はプロアマ問わず、専らスチルカメラマンのための動画機能として存続するだろう。

一眼レフかミラーレス一眼か、どちらを選択すればよいか?

映像表現の視点から考えると、シネカメラかビデオカメラかという基準に近い。被写界深度の浅さ(ボケ)を優先するのか、合成やグレーディング耐性を考慮して色深度を優先するのか、AFを優先するのか、長時間撮影の有無でも選択が異なる。現状では業務レベルでAF(マニュアル撮影時のフルタイム動画AF)が駆動し、より動画撮影に適したレンズ群が揃っているのは、ミラーレスタイプのマイクロフォーサーズ規格、SONY Eマウント規格に限られる。連続撮影時間に関しては、一眼レフ(AVCHD以外)なら長時間(29分59秒まで)回せない。そして両者は撮影ジャンルにも左右される。シネマ的な表現がしたいなら前者、ビデオ的な表現がしたいなら後者、両方の場合も後者となる。

また、運用的な視点から考えると、動画機能と静止画機能の使用比率や重要度も影響する。現在のデジタル一眼は、動画と静止画機能を含めたデジタルカメラであり、動画は写真のオマケという仕様ではなくなった。静止画中心なら一眼レフ、動画中心ならミラーレス一眼というように、双方のウェイトを考慮するのは自然な流れだ。映像制作の現場でもスチル撮影が必要な場合は多々あり、その逆も然りである。

EOS 1DC
CINEMA EOS SYSTEM EOS 1 DC
http://cweb.canon.jp/cinema-eos/lineup/digitalcamera/1d-c/

敢えて最も高性能な一眼レフを挙げるならば、Canon-Log搭載の4KシネカメラEOS 1DCとなる。しかし、EOS 1DCはCINEMA EOS SYSTEMのラインナップであり、4Kシネカメラという位置付けである。個人的には1DXのスチル機能が搭載され、デザインも一眼レフなので、DSLRとしか言いようがないと思うが、実勢価格は100万円程度。

ビデオカメラ的な表現

ビデオカメラ的な表現と言えば、ENGが一般的である。ENG(Electric News Gathering)の本来の意味は報道取材における少人数ロケーション形式を指す。これらは情報優先なので過剰にボケてはならない。限られた条件で多くの情報伝達が必要であり、被写体の位置情報を示すために、パンとズームの同時使用などは日常茶飯事である。この場合は連動してフォーカスと絞り値の調整(露出変更)も必要である。

ENGカメラなら、これら4つのアクションをマニュアルで一人ですることも可能だが、一眼動画の場合は構造上の問題で、フォーカスかズームのいずれかをAFやServoにし、露出はマニュアルで固定かオートにしなくてはならない。一眼動画用の電動サーボ搭載レンズは実用性が低いためズームは手動、フォーカスは動画AF、露出はマニュアルで固定かオートという状況を考慮すると、ミラーレス一眼が最適である。

AG-HPX37
1/3型ENGレンズ(FUJI XT17×4.5BRM-K14)
フルマニュアルでもワンマンでオペレーションできる構造になっている。

シネカメラ的な表現

映画やテレビドラマの場合は、シーンに合わせて撮影時間や撮影機材の調整ができるため、クレーン、ドリー、スライダー、スタビライザーなどの特機がフレキシブルに使える。さらに一眼動画にはマウントアダプターを介すれば、シネ用途のPLレンズを装着できるため、シネカメラ同様にセカンド(フォーカスマン)によるマニュアルフォーカスができる。

そのためAFは必要ない。うるさい背景をボカしたり、被写体を浮かび上がらせるための演出効果としてボケが有効なため、当初はフルサイズ一眼レフが注目されたわけだ。マイクロフォーサーズマウントは、マウントアダプターを介すれば多くのマニュアルレンズが使用できるため利便性が高い。そのためGH2やGH3はシネカメラ的な使われ方もしてきた。

一般的にビデオカメラは現場「に」合わせるカメラ、シネカメラは現場「が」合わせるカメラと言われる。一眼動画は後者の性質を持つため、業務用として使う場合は、様々な技術的ノウハウや現場の理解が必要となる。現在は業務用の大判センサーカメラが安価に出回っているため、特に一眼レフをシネスタイルで使うのは現実的ではなくなった。

ボケは、どこまで許容されるのか

現在は、ムービー機能を搭載した廉価なフルサイズ機も増えており、LX7やRX100といったコンデジ動画でも背景をぼかすことができる。しかし、ボケはズームやパンと同様で表現効果の一つに過ぎない。動画の場合は画面の70%以上がボケると、極端に見にくくなる。人間には過去の経験則に基づいて情報を処理するメンタルモデル(認知心理学)というものがあり、例えば「洗濯機はこの位置にスタートボタンがあるものだ」という心理作用である。その位置にボタンがなければ「操作性の悪い洗濯機」として認知される。必要以上にボケ・ズーム・パンをすると、これと同様の心理作用が働いてしまい、見難い映像、疲れる映像となる。また心理作用だけでなく、生理的な症状に発展することもあるため、広く第三者への視聴が目的の場合は注意が必要である。

ダイナミックレンジの狭さをどう考えるか

2013年以降はNEX-FS700のバージョンアップ、安価なBMCCシリーズの発売により、広いダイナミックレンジのlog付きカムコーダーでの4K収録、RAW収録というワークフローが台頭してきた。一眼動画の欠点としてダイナミックレンジの狭さがあるが、この問題をどう考えるかで価値観が大きく変わってくる。

ダイナミックレンジの狭さは、露出、ライティング、構図などを工夫してレンジ内で収まるように調整したり、逆にそれを生かす絵作りをすればいい。そもそも世の中には駅張りポスターやテレビ番組然り、狭ダイナミックレンジ映像(静止画・動画)が氾濫しており、ある意味(産業としての映像表現)では、こうした絵作りで様々な媒体が成立している。 一般的に狭ダイナミックレンジ高精細高彩度の画の方がメリハリがあって「色鮮やかな映像」として、一般視聴者に好まれる傾向があるからだ。確かにlog収録はダイナミックレンが広くて魅力的だが、グレーディング前提のためコストも時間もかかる。

総括・まとめ

以上を踏まえると、現在でも一眼動画は “ ボケるビデオカメラ ” として、プロアマ問わず魅力的なシステムなのだ。但し、映像業界は大判センサービデオカメラ、シネカメラにユーザー動向がシフトしているため、限定的にしか使われないだろう。新たな傾向としてはスチルカメラマンの動画撮影、WEB業界、DTP業界などでも動画コンテンツを制作するケースが増えているため、こうしたクリエーター達には手軽な一眼動画が積極的に普及していくことが予想される。

2014.02


【この記事を読んだ人には、以下の記事もお薦めしています】
デジタル一眼ムービーに最適なICレコーダーとは!?DSLR音声収録

記事一覧に戻る