技術ファイル|映像収録(撮影)編

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ミラーレス一眼、動画撮影機能を比較!
GH3・NEX-7・E-M5

デジタル一眼ムービーは、一眼レフ(DSLR)の一機能として発展したため、動画撮影に関する様々な機能制限があった。初期(2008-2009)のデジタル一眼ムービーがインディーズ映画やMVで重用されたように、その機能上シネカメラの代用品として認知されてきた。そして映像業界中が廉価な大判シネカメラとしてCANON EOS 5DMark IIに注目する中、2009年にプロの現場でも使える大判ビデオカメラとして “ 密かに ” 先鞭を付けていたのが、ミラーレス一眼タイプのPanasonic DMC-GH1だったのだ。 2013年となり、DSLRの機種選択肢は大きく広がったが、業務用途を想定した以下の仕様基準を考慮すると、未だミラーレス一眼タイプしか選択肢がない。これにはスチルカメラの動画機能という根本的な問題や、あくまでも民生機であることが影響している。ここでは、こうした状況を整理したい。

DC-R302
GH3+DC-R302+MKE600+V-LCD50-HDI
ビデオスタイルでの運用例

デジタル一眼レフによる動画撮影はマニュアルフォーカス、音声別録りのシネスタイルが一般的である。その場合は動画マニュアル露出さえあれば問題ない。しかしENG(Electric News Gathering)のようなビデオスタイルで考えると、下記機能が必須となる。

三大ミラーレス一眼、現行機種

GH3
参照:http://panasonic.jp/
Panasonic LUMIX DMC-GH3(マイクロフォーサーズ規格)
NEX-7
参照:http://www.sony.jp/
SONY α NEX-7(APS-C規格・Eマウント)
E-M5
参照:http://olympus-imaging.jp/
OLYMPUS OM-D E-M5(マイクロフォーサーズ規格)

【機種別比較表】※ファームアップで変更される可能性有り。
機能項目 DMC-GH3 α NEX-7 OM-D E-M5
1.動画マニュアル露出
2.HDMI同時出力(映像・音声) △映像のみ ×
3.フルタイム動画AF(マニュアル露出時)
4.動画撮影に最適化されたレンズ群
5.外部マイク入力端子 △オプション対応
6.マニュアル録音 ×
7.ヘッドフォン出力 × ×

表のように、現状ではすべての条件を満たすカメラはGH3しかない。それもそのはず、GH3は高ビットレート72Mbps(ALL-Intra)モードを搭載し、プロユーザーも想定しているからだ。筆者のミラーレス一眼歴はGH1から始まったが、音声はAGC(オートゲインコントロール)、HDMI出力は再生のみ、ヘッドフォン端子なしという状況だった。現在はGH3+DC-R302なので、HD-SDI出力がない以外は、概ね業務用のマシンと遜色がない。優先順位は、GH3→NEX-7→E-M5。

動画マニュアル露出

自己の意思決定を映像表現に反映させることは、自動露出だけではできない。動画マニュアル露出も必要である。自動露出だけでは露出のバラツキや東日本の蛍光灯下で発生しやすいフリッカーの対策もできなくなる。 但し、自動露出を否定するわけではない。露出差が激しい場所でのパンニングなどには有効であり、状況ごとに使い分ければよい。例えばAマウントのSONY α99、α77などはマニュアルフォーカス時であれば、動画マニュアル露出が可能だが、AFにすると絞り固定(F3.5)の自動露出になる。使い方によっては、これで十分な場合もあるだろう。

HDMI同時出力(映像・音声)

概ね、この機能には三つの役割がある。
(1)外部モニターへ出力し、露出、ピント、構図の確認をリアルタイムですること。
(2)外部レコーダーへ映像と音声を出力し、バックアップ(同時記録)をとること。
(3)非圧縮データを外部レコーダーに出力し、高品質なコーディックへ変換すること。※GH2は映像出力のみだったが、GH3で音声出力も追加された。

フルタイム動画AF(マニュアル露出時)

特に、ドキュメンタリーや報道要素の強いENG(Electric News Gathering)収録では、 ズーミングや、パンとズームの同時使用が必要な場合がある。ミラーレス一眼にこのようなカメラワークを要求する場合、フルタイム動画AFが不可欠となる。

動画撮影に最適化されたレンズ群

スチルとムービーでは表現手法が異なり、その違いがレンズ仕様にも反映されている。例えば、キヤノンEFレンズはスチル用のためフォーカスリングのレンジが狭く、マニュアルでの素早いピント合わせに難がある。また、滑らかなズーム操作もできず、カメラトップのマイクが摩擦音を拾ってしまう。このような点からも、ムービー撮影に最適化されたレンズ群は必須である。

GH3 GH3
NOKTON 25mm F0.95(上)
LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.(下)

外部マイク入力端子

外部レコーダーやミキサーから出力された音声データを、カメラ内の映像と同期するには外部マイク入力端子が必須である。勿論、別録で編集時に同期することも可能だが、現場で同期データを確認できれば、仕上がりをイメージできるし、編集時間も短縮できる。但し、カメラの内蔵レコーダーの音声解像度は16bit 48KHzが一般的なので、それ以上を望む場合は、高性能な外部レコーダーを使用し、編集時に同期させるしかない。

MKE600
SENNHEISER MKE600+Rycote ショックマウント

マニュアル録音

AGC(オートゲインコントロール)は、録音レベルを問わず、ゲインを均一化させようとする機能なので、多くのヒスノイズが発生してしまう場合がある。また、映像と同じで自己の意思決定を音声収録に反映させれなければ、音響上の臨場感を確保できない。AGCキャンセリング機能のある外部ミキサーを使って回避する方法もあるが、モノラル収録しかできなくなる。

DC-R302
DSLR専用ミキサー DC-R302

ヘッドフォン出力

Nikon D4を皮切りに、最近では複数のハイエンド機種で装備されるようになった。外部ミキサーやICレコーダーなどを使用しなくても、カメラからの音声の戻りが同時に確認できることは、非常に便利である。
DSLR音声収録に関する詳細は、こちらの記事を参照。

OLYMPUS OM-D E-M5の問題点

外部入力端子が標準装備されていないため、マイクアダプター(EMA-1)を使用しなくてはならないこと。これを使用すると上部のシューマウントが使えないため、外部マイクなどが装着できなくなる。勿論、リグやブラケットを使ったり、レコーダーで別録にすれば解消できる。

HDMI同時出力ができないこと。現状でこれができないのはハイエンド機としては致命的だが、E-M5はスチル機能を重視しているというメーカーの姿勢でもある。被写界深度の浅いレンズを使用した際、動画撮影と同時に外部モニターのピーキングモードでピントの確認ができないのはトラブルの原因になる。動画撮影時は背面の3.0型液晶モニター、内蔵電子ビューファインダーだけでは効率性が悪く、第三者にモニターアウトできないのも、現場では問題が生じる。現在の状況は、HDMI非圧縮出力という次のレベルに進展している。一歩先に進んでいるのがNikon D800の非圧縮8bit 4:2:2アウトであり、Ki ProやNinjaなどのレコーダーに効果的に収録できるため、シネマトグラファーには利便性が高い。

SONY α NEX-7の問題点

録音機能がAGC(オートゲインコントロール)であること。これを回避するのはDSLR専用ミキサーでキャンセリングするか、外部レコーダーで別録するしかない。しかし、今時AGC殺しを想定してカメラ選びをしている場合ではない。発売時期が2012年1月で、ボディ単体で実売価格89,000円(2013年03月)もするなら、マニュアル録音機能は必須だろう。1080/60p(AVCHD Ver.2.0)に対応しても基礎的な機能が欠落しているところがソニーの課題だ。ソニーは機能が重複する多くの製品をリリースしているため、こうした意図的な機能制限にどう対処するのかが難しいところだ。

総括・まとめ

序論の指標に基づくと最適な機種はGH3になるが、都合上、画質(色調・ダイナミックレンジ・解像感等)については割愛した。また、一眼レフかミラーレス一眼か、シネスタイルかビデオスタイルかの選択など、プロアマ問わずこうした問題は多くのクリエーターにとって共通のテーマである。

クロジール
RIGでシネスタイルに拡張されたDSLR
http://www.chrosziel.com/

差し詰め、筆者の場合は当初から「ボケるビデオカメラ」としての運用に拘ったため、RIGを組んだシネスタイルや、AF性能が著しく劣るEOSムービーには興味を示さなかった。唯一AFが実用レベルで使えそうなのがGH1しか存在せず、その特性を生かした合理的な運用法を模索していた。しかし、この頃は業務上のワークフローより、EOSムービーとサードパーティー製品のセールス情報が溢れており、シネスタイル以外の情報は国内では皆無に等しかった。そのため個人的には写真業界や音響業界からの情報蒐集を重視した。

これまでGH1→GH2→GH3と使ってきたが、特にGH3は突出した拡張性を持つ。あくまでもスペック上の比較になるが、GH3(89,000円)+Ninja2(84,800円)+DR-60D(40,480円)なら実勢価格が214,280円。バックアップ記録、Apple ProRes 422収録、高品質な音声収録が可能であり、Ninja2は外部モニターとしても利用できる。別売りのSSD、レンズ、可変NDフィルターなどを考慮しても、このコストでこのレベルのビデオカメラなど存在しない。スチル機能があってボケやパンフォーカス、2時間弱まで連続撮影可能、さらに実用レベルでAFが効くわけだから、改めてGH3が秀逸な大判センサービデオカメラだと実感できる。

しかし、幸か不幸か業務用の大判センサービデオカメラ、シネカメラの開発と低価格化が予想以上に早かったため、映像業界の動向はCINEMA EOS SYSTEM、SONY CineAltaシリーズ、Blackmagic Cinema Cameraなどに向いており、多くのプロユーザーは、これらにシフトしている。

2013.03


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